日本酒の味わいの土台になるのが、酒造りのために選ばれてきた米「酒造好適米」。食べるお米との違い、代表品種の産地と特徴、そして国の統計で見る生産量を、公的資料をもとに整理します。
酒米とは、正しくは「酒造好適米」と呼ばれる、酒造りに適したお米のことです(Go NAGANO)。農林水産省の資料でも、日本酒の原料米には主食用としても流通している品種のほか、醸造に適した品種である山田錦や五百万石などの「酒造好適米」が使われ、酒造好適米は主に契約栽培で取引されていると説明されています。
酒造好適米は、コシヒカリなどの主食用品種に比べて栽培が難しく、収量が低いことなどから、主食用米より高値で取引されてきました。ただし農林水産省は、主食用米の価格が高騰した近年は、主食用米の価格が酒造好適米の価格を上回る状況になっているとしています。
麹米と掛米
京都府の研究資料によると、麹造りには麹菌を十分に繁殖させるため、心白を持つ大粒の米(「山田錦」「五百万石」など)が適するといわれ、清酒製造者はこうした米を酒造好適米と呼んでいます。一方、掛米(醸造工程で使う米)には「日本晴」「コシヒカリ」などの一般米が使われることもあり、大吟醸などの高級酒では掛米にも酒造好適米を使う場合があります。「山田錦100%」の清酒とは、すべてに山田錦を使ったという意味です。
違いの核心は「心白」「大粒」「低タンパク」の3点です。兵庫県は、良い酒米の条件として「大粒」「中央に鮮明な心白」「低タンパク質」を挙げ、山田錦はそのすべてを兼ね備えた良質な酒米だと紹介しています。
| 特徴 | 内容 | 出典の要点 |
|---|---|---|
| 大粒 | 粒が大きく、麹造りに適するとされます。 | 京都府の研究資料は、麹造りには心白を有する大粒の米が適するとしています。 |
| 心白 | 米の中心にある白い部分。飯米より酒米のほうが大きいとされます。 | Go NAGANOは、心白はタンパク質が少なく溶けやすく、酒造りに向いた部位と説明しています。 |
| 低タンパク | タンパク質が多すぎると酒質低下の原因になります。 | 京都府の資料は、過多のタンパク質は品質低下の原因になると指摘し、原料米にはタンパク質の少ない品種が求められるとしています。 |
| 精米歩合 | 飯米は約90%、酒米は70%以下、大吟醸なら50%以下が必要とされます。 | Go NAGANOの説明です。精米で外側を大きく削る前提で使われます。 |
酒米は、外側を大きく削って使うことを前提にした米です。精米歩合とは、玄米を削ったあとに残る白米の割合のこと。たとえば精米歩合50%は、玄米の外側を半分削ったことを意味し、数字が小さいほど多く削っています。精米や麹造りなど、造りの流れは日本酒の造り方で解説しています。
国税庁(札幌国税局)の「清酒の表示早わかり」によると、吟醸酒は精米歩合60%以下の白米、大吟醸酒は50%以下の白米、本醸造酒は70%以下の白米を原料とします。吟醸酒や大吟醸酒は、こうした高い精白が定義に含まれる種類です。
京都府の研究資料では、「祝」と「京の輝き」の2品種とも、精米が進むほど米のタンパク質含有量が低下することが示されています。外側を削るほど、タンパク質は少なくなっていきます。長野県生まれの美山錦は、心白が小さいため高精米されることが多い品種として紹介されています(Go NAGANO)。
代表的な品種は山田錦(兵庫県)、五百万石(新潟県など)、美山錦(長野県で誕生)、雄町(岡山県)の4つです。ここでは、農林水産省・兵庫県・新潟県・JAなどの公開資料で確認できた内容に限って整理します。
| 品種 | 主な産地 | 特徴 | 出典の要点 |
|---|---|---|---|
| 山田錦 やまだにしき | 兵庫県(令和7年産で山田錦の57%)。栽培適地は三木市・加東市付近。 | 大粒・中央に鮮明な心白・低タンパク質をすべて備える。酒造家に人気が高い。 | 兵庫県:1923年(大正12年)に兵庫県立農事試験場で「山田穂」と「短稈渡船」を交配、1936年(昭和11年)に命名され県の奨励品種に。令和5年産の作付面積4,610ha。 |
| 五百万石 ごひゃくまんごく | 新潟県(令和7年産で五百万石の51%)、富山県15%、福井県14%。 | 山田錦に次いで生産量が多い。新潟県が「山田錦」と掛け合わせて育成した「越淡麗」の親の一つ。 | 農林水産省:令和7年産の五百万石は14,380トン(推計値)。新潟県:越淡麗は山田錦と五百万石の交配で育成。 |
| 美山錦 みやまにしき | 長野県を中心に東北地方でも多く栽培。 | 寒さに強く、ガンマ線の照射による突然変異で生まれた品種。高精米されることが多く、淡麗な酒に仕上がるものが多い。 | Go NAGANO:1978年に長野県農事試験場で誕生。岩手県資料:昭和53年に長野県で「美山錦」と命名され、粒が大きい。 |
| 雄町 おまち | 岡山県(生産量の約95%)。発祥は岡山市中区雄町。 | 草丈が高く穂が大きい。収量が少なく、栽培も酒造りも難しいとされる。麹菌のはぜ込みがよく米が溶けやすい。 | JA全農おかやま:1859年(安政6年)に農家が発見。JA全農ひろしま:100年以上前に発見され現在も栽培されているのは雄町だけ。 |
酒造好適米には、この4品種以外にも各地で育成された品種があります。この表は、公的資料で内容を確認できた品種に絞っています。山田錦の主産地である兵庫県北播磨・六甲山北部地域の「兵庫の酒米「山田錦」生産システム」は、2025年1月24日に日本農業遺産に認定されました(兵庫県)。
生産量が最も多い品種は山田錦で、令和7年産(推計値)は32,678トン、全体の37%です。農林水産省の資料「日本酒原料米をめぐる状況」(令和8年8月)によると、令和7年産の酒造好適米の生産量は約8.7万トン(推計値)で、山田錦と五百万石の2銘柄で全体の5割以上を占めています。
| 銘柄 | 令和6年産(トン) | 令和7年産・推計値(トン) | 令和7年産シェア |
|---|---|---|---|
| 山田錦 | 33,842 | 32,678 | 37% |
| 五百万石 | 17,650 | 14,380 | 16% |
| 美山錦 | 4,640 | 4,242 | 5% |
| 雄町 | 2,965 | 3,085 | 4% |
| その他 | 35,575 | 32,938 | 38% |
| 全国計 | 94,672 | 87,323 | 100% |
産地別では、令和7年産は兵庫県24,830トン(28%)、新潟県9,912トン(11%)、岡山県6,178トン(7%)、長野県5,392トン(6%)、秋田県3,730トン(4%)で、この5県で約6割を占めます。銘柄ごとの産地では、山田錦は兵庫県が57%(18,516トン)、岡山県9%、山口県7%。五百万石は新潟県が51%(7,300トン)、富山県15%、福井県14%です。
数字の注意点
資料は農林水産省「農産物検査結果」に基づきます。令和7年産は、令和8年3月31日現在の速報値を、直近3か年の農産物検査の進捗率で確定値見合いに推計した値です。四捨五入のため、合計と内訳が一致しない場合があります。また、酒造好適米の生産量は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で減少した令和2〜4年産を除くと、9〜10万トン程度で推移しているとされています。
Q. 酒米(酒造好適米)とは何ですか?
酒造りに適した米のことで、酒造好適米とも呼ばれます。麹造りには心白を持つ大粒の米が適するとされ、山田錦や五百万石が代表例です。主食用米より栽培が難しく収量も低いため、主に契約栽培で取引されています。
Q. 酒米と食べるお米の違いは何ですか?
酒米は大粒で、米粒の中心に心白があり、タンパク質が少ない品種が好まれる点が特徴です。さらに酒造りでは精米で外側を大きく削るため、精米歩合は飯米が約90%に対し、酒米は70%以下、大吟醸なら50%以下が必要とされます。
Q. 心白(しんぱく)とは何ですか?
米粒の中心にある白く見える部分です。タンパク質が少なく溶けやすいため、日本酒造りに向いた部位とされています。
Q. 酒米の代表的な品種は何ですか?
山田錦(兵庫県)、五百万石(新潟県など)、美山錦(長野県で生まれた品種)、雄町(岡山県)が代表的です。農林水産省の資料では、令和7年産の酒造好適米は、山田錦と五百万石の2銘柄だけで生産量の5割以上を占めます。
Q. 生産量が最も多い酒米は何ですか?
山田錦です。農林水産省の資料では、令和7年産(推計値)の山田錦は32,678トンで全体の37%、次いで五百万石が14,380トン(16%)です。
Q. 酒米は精米歩合とどう関係しますか?
酒米は外側を多く削る前提で使われます。国税庁の表示基準では、吟醸酒は精米歩合60%以下、大吟醸酒は50%以下、本醸造酒は70%以下の白米を原料とします。
Terroir HUB SAKEの蔵ページでは、公式サイトに記載がある銘柄の精米歩合や使用米などの情報を載せています。産地の県ページから蔵を探せます。
出典(確認日 2026-10-26):
農林水産省 農産局「日本酒原料米をめぐる状況」令和8年8月(酒造好適米の定義的説明、価格、生産量、産地別・銘柄別生産量)
兵庫県「兵庫の酒米」(山田錦の交配・命名、大粒・心白・低タンパク質、産地、作付面積)
兵庫県「兵庫の酒米「山田錦」生産システム」日本農業遺産認定(北播磨・六甲山北部地域)
新潟県「酒造好適米「越淡麗」について」(山田錦と五百万石の交配)
JA全農おかやま「岡山県の酒米「雄町」とは?」(発見年、岡山県産の割合、特徴)
JA全農ひろしま「雄町」資料(100年以上前に発見、酒造適性)
Go NAGANO「酒米」(酒造好適米の説明、心白、精米歩合、美山錦)
岩手県「水稲(うるち)「美山錦」」(昭和53年命名、粒が大きい)
京都府 生物資源研究センター「京都産酒米における貯蔵タンパク質の特徴」(麹米・掛米、タンパク質、精米とタンパク質)
札幌国税局「清酒の表示早わかり」(吟醸酒・大吟醸酒・本醸造酒の精米歩合)