日本酒の酒器は、形が香りの感じ方を、素材が温度と口当たりを左右するとされています。徳利・お猪口・ぐい呑み・片口・盃・枡・ワイングラスの違いを、蔵元の公式コラムなどの公開情報から整理しました。
日本酒の酒器は、お酒を注いでおく器(徳利・片口)と、直接口をつけて飲む器(お猪口・ぐい呑み・盃・枡・グラス)に大きく分けられます。沢の鶴の酒みづきは、徳利から注いだお猪口で色や透明度、香りを楽しめると紹介しています。
同じ日本酒でも器が変わると印象が変わるとされています。沢の鶴は「日本酒の色の状態や香りの立ち方、全体の印象が大きく変化する」と説明しています。ただし、いずれも各社のコラムにある見解や経験則で、決まった正解はありません。
選ぶポイントは3つ
口径(香り)、大きさ(温度の保ちやすさ)、素材(口当たりと温度の伝わり方)です。以下、蔵元のコラムでの説明をそのまま整理します。
主な酒器は7種類です。形の特徴と向いている飲み方を、出典ごとに表にまとめました。
| 器 | 読み | 特徴 | 向いている飲み方(出典) |
|---|---|---|---|
| 徳利 | とっくり | 首が細く、下が膨らんだ形。1合(180ml)〜2合(360ml)が一般的 | 冷酒は小ぶり、燗酒をゆっくり飲むなら大ぶり(朝日酒造) |
| お猪口 | おちょこ | 一口で飲める量が入る大きさ。形は円・四角・六角などさまざま | 注ぎたての状態で、燗酒を少しずつ(朝日酒造) |
| ぐい呑み | ぐいのみ | お猪口より深く、口径が一回り大きい | ぬる燗や常温(朝日酒造) |
| 片口 | かたくち | 首がなく、注ぎ口が片側にある | ひや酒・冷酒には使いやすく、燗酒には不向き(朝日酒造) |
| 盃 | さかずき | 小さな皿のような、深さのない平らな形 | お屠蘇や三々九度など神事の場(沢の鶴) |
| 枡 | ます | もとは米や酒をはかる道具。木製 | 直接注ぐ、または枡にグラスを入れて注ぐ(沢の鶴) |
| ワイングラス | わいんぐらす | 香りが立つ形状。底面まで見え、色合いや粘性が分かる | 香りを楽しみたい吟醸酒など(沢の鶴・朝日酒造) |
燗をつける器として、沢の鶴は「ちろり」も紹介しています。湯煎で燗をつける器で、錫・銀・真鍮など熱が伝わりやすい金属製があり、2合分の燗をつけられるものもあるとのことです。
徳利は、朝日酒造によると、室町時代後半ごろから酒や醤油の保管・運搬に使われていたとされ、「徳利」の名称は江戸時代から使われ始めたようだとされています。いまは酒を盃に注ぐ器として使われ、冷酒には「氷ポケット」付きのものもあります。
お猪口は、朝日酒造のコラムによると明確な定義はなく、「一口で飲めるほどの酒が入る大きさ」のものを指します。利き酒用の唎猪口は32ml(2勺)から180ml(1合)まであり、54ml(3勺)や90ml(5勺)が人気とされています。
ぐい呑みは、沢の鶴によるとぐいぐい飲める量が入り、家飲みなど気軽な場面で使われることが多い器です。飲み終えるまでに時間がかかるため、冷えた状態から常温に上がる間の口あたりや香り、旨味の変化を楽しめるとしています。
片口は注ぎ口が片側にあり、徳利と同様に酒を移しておく器です。盃は小さな皿のように浅く平らな形で、沢の鶴によるとお屠蘇や三々九度など神事の場でも使われます。朝日酒造は、素材は漆器や陶磁器、金・銀・錫などの金属、ガラスなどさまざまとしています。
口径が広い器は香りを感じやすく、狭い器はすっきり飲めるとされています。沢の鶴は「口径が広い酒器に日本酒を注ぐと、ふわっと広がる香りをより感じることができます」と説明し、口がラッパ型に広がった縦長の器は香りが広がりやすく、爽やかさを感じさせるとしています。
素材は、口当たりと温度の伝わり方に関わるとされています。蔵元のコラムの説明を素材ごとにまとめました。
| 素材 | コラムでの説明 | 出典 |
|---|---|---|
| 陶器 | 角のないやわらかな口あたりにし、甘さを引き立てる。厚みがありコクのある酒や燗酒に向く | 朝日酒造・沢の鶴 |
| 磁器 | 硬くキメの細かい手触り。陶器より薄く軽く作れるため、ガラスに近い性質もある | 朝日酒造 |
| ガラス | 素材特有の味・匂いがなく、味をダイレクトに感じられる。大吟醸には薄手、にごり酒には厚手 | 朝日酒造・沢の鶴 |
| 錫 | 熱伝導率が高く、冷酒を注ぐと器全体が冷える。雑味をとりまろやかな口当たりになると「言われる」 | 朝日酒造・沢の鶴 |
| 漆 | 燗酒を注いでも持ち手が熱くなりすぎず、冷めづらい | 朝日酒造 |
| 木 | 木そのものの香りを楽しめるのが魅力。お酒の臭みを和らげるとされる | 朝日酒造 |
錫は、大阪府の公式ページによると、江戸時代初期の書物に大阪での錫器の製造販売が記されており、現在も酒器や茶器などが作られている伝統的工芸品です。大阪浪華錫器の製造工程では、錫を97%以上含む合金にするとされています。なお、朝日酒造は低温の錫は変質する可能性があるとして、冷蔵庫や冷凍庫での保管を避けるよう案内しています。
枡は、もともと米や酒などをはかる道具として生まれた木製の器です。岐阜県大垣市の公式の子ども向けページは、そう説明したうえで、枡の多くがヒノキで作られていると紹介しています。同市の公式ページによると、大垣市には木枡を製造する業者が5社あり、その5社で全国の生産量の8割を占めています。
酒器としての枡について、沢の鶴は、直接お酒を注ぐ方法と、枡にグラスを入れて飲む方法の2通りがあると紹介しています。縁起が良いとされ、パーティーや儀式、鏡開きで使われることが多く、角に塩を盛って舐めながら飲む飲み方もあるとのことです。
朝日酒造は、枡酒は角ではなく直線の部分に口を付けて飲むのが本来の飲み方とされており、木製のものは木の香りを感じられるのが魅力の一つで、枡の中にグラスを置いてなみなみと注ぐ「もっきり」スタイルも楽しめるとしています。
ワイングラスは、日本酒の香りと見た目を楽しむ器として広がっています。「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」の公式サイトは、猪口からグラスに移すだけでも味わいの違いが感じられると説明し、一番の発見は「香り」と「見る楽しさ」だったとしています。
同サイトによると、グラスの形状により伝統的な酒器では捉えにくかった繊細な香りを感じ取れるほか、底面まで見えるため色合いや粘性も分かります。このアワードは2011年に始まり、ワイングラスでおいしい日本酒アワード実行委員会が主催し、日本酒造組合中央会が後援しています。
朝日酒造は、ワイングラスは香りが立つように作られているため日本酒もより芳香になり、側面がストレートに近いほど香りは直接的ではっきりしたものになるとしています。沢の鶴は、小ぶりのお猪口や小さめのワイングラスなら温度変化が少ない状態で楽しめるとしています。
Q. お猪口とぐい呑みの違いは何ですか?
A. 沢の鶴によると、ぐい呑みはお猪口より深さがあり、口径も一回り大きい酒器です。朝日酒造は、どちらもサイズの明確な線引きはないとしています。
Q. 徳利と片口はどう違いますか?
A. 沢の鶴は、徳利は縦長で首が締まった形、片口は首がなく注ぎ口が片側にある形と説明しています。朝日酒造は、片口は口径が広く蓋がないので熱が冷めやすく、燗酒には不向きで冷酒に使いやすいとしています。
Q. 日本酒をワイングラスで飲むと何が変わりますか?
A. ワイングラスでおいしい日本酒アワードの公式サイトは、グラスの形状により伝統的な酒器では捉えにくかった繊細な香りを感じ取れ、色合いや粘性も分かると説明しています。朝日酒造も、香りが立つよう作られているため日本酒もより芳香になるとしています。
Q. 冷酒と燗酒では、器の大きさをどう選べばよいですか?
A. 沢の鶴と朝日酒造は、冷酒はぬるくなる前に飲み切れる小ぶりの器、燗酒は温度が下がっていく変化を楽しみたいなら大ぶりの器もよいとしています。熱いまま飲みたい場合は、沢の鶴は小さめの徳利を挙げています。
Q. 枡で日本酒を飲むときの作法はありますか?
A. 朝日酒造は、枡酒は角ではなく直線の部分に口を付けて飲むのが本来の飲み方とされているとしています。沢の鶴は、直接注ぐ方法と、枡にグラスを入れて注ぐ方法の2通りを紹介しています。
Q. 錫の酒器で日本酒の味は変わりますか?
A. 朝日酒造と沢の鶴は、錫の酒器は雑味をとり口当たりがまろやかになると「言われています」と紹介しています。いずれも伝聞の表現で、感じ方には個人差があります。
出典:沢の鶴 酒みづき「日本酒は酒器で味が変わる?酒器の種類別・選び方の違いとは」、沢の鶴 酒みづき「日本酒の酒器は種類が豊富!ぐい呑みや片口など酒器の特徴を知ろう」、朝日酒造 KUBOTAYA「徳利で日本酒をもっと楽しく」、朝日酒造 KUBOTAYA「おちょことは?素材ごとの特徴や味わいの違い」、朝日酒造 KUBOTAYA「日本酒を飲むなら酒器にもこだわりを」、朝日酒造 KUBOTAYA「錫の酒器で日本酒をワンランク上の味わいに」、朝日酒造 KUBOTAYA「日本酒をより楽しめる。グラスの種類や選び方」、ワイングラスでおいしい日本酒アワード公式サイト、大阪府「大阪浪華錫器、なにわ錫器」、大垣市「あなたの周りの『大垣産』」、大垣市「特産品|おおがきっず!」