日本酒のラベルの文字には、国税庁の「清酒の製法品質表示基準」で決められた意味があります。何が必ず書かれ、何が任意なのか、「吟醸」「生一本」などの言葉が使える条件まで、基準の原文に沿ってまとめました。
結論から言うと、清酒のラベルには「原材料名」「保存又は飲用上の注意事項(非加熱の場合)」「原産国名(輸入品の場合)」「外国産清酒の使用表示」が国税庁の基準で必要とされ、これに製造者・所在地・内容量・品目・アルコール分が義務づけられています。以下の表は、国税庁「清酒の製法品質表示基準」と「「清酒の製法品質表示基準」の概要」、酒類業組合法上の表示義務事項の資料をもとに整理したものです。
| 表示事項 | ラベルでの見え方 | ルール |
|---|---|---|
| 原材料名 | 原材料名 米、米こうじ、醸造アルコール | 水を除く使用原材料を、使用量の多い順に書きます。特定名称を表示する清酒は、近接する場所に精米歩合も併せて表示します。 |
| 保存又は飲用上の注意事項 | 要冷蔵/冷蔵庫に保管してください など | 製成後に一切加熱処理をしないで製造場から出荷する清酒に表示します。 |
| 原産国名 | 原産国 ○○ | 輸入品の場合に表示します。 |
| 外国産清酒を使用したものの表示 | ○○産清酒5%使用 など | 国内産清酒と外国産清酒の両方を使って造った清酒に、外国産清酒の原産国名と使用割合を表示します。使用割合は10%の幅で表示してもよいとされています。 |
| 製造者の氏名又は名称・製造場の所在地 | 製造者 ○○酒造 所在地 ○○県… | 所在地は、届出をした記号での表示も認められています。 |
| 内容量 | 内容量 720ml | 容器に充填した容量を「内容量」の文字の後に表示します。 |
| 品目 | 清酒 | 原料の米に国内産米のみを使い、日本国内で製造された清酒に限り「日本酒」と表示してもよいとされています。 |
| アルコール分 | アルコール分 15度 | 清酒は、アルコール分±1度の範囲内で、1度単位または0.5度刻みでの表示も認められています。 |
これらの文字は、原則として8ポイント以上の大きさの日本文字で表示することになっています(容量200ミリリットル以下の容器は6ポイント以上)。なお、製造時期は以前は必要記載事項でしたが、令和5年(2023年)1月1日施行の改正で任意記載事項に変わりました。そのため、製造年月の表示は必須ではなくなっています。
「純米」「吟醸」「本醸造」といった特定名称は、基準が定める製法品質の要件を満たした清酒にだけ表示できる名称で、使うかどうか自体は製造者の任意です。特定名称は、原料や製造方法の違いによって次の8種類に分けられます。それぞれの味わいの違いは種類と分類のガイドで解説しています。
| 特定名称 | 使用原料 | 精米歩合 | こうじ米 | 香味等の要件 |
|---|---|---|---|---|
| 吟醸酒 ginjo | 米、米こうじ、醸造アルコール | 60%以下 | 15%以上 | 吟醸造り、固有の香味・色沢が良好 |
| 大吟醸酒 daiginjo | 米、米こうじ、醸造アルコール | 50%以下 | 15%以上 | 吟醸造り、固有の香味・色沢が特に良好 |
| 純米酒 junmai | 米、米こうじ | 規定なし | 15%以上 | 香味・色沢が良好 |
| 純米吟醸酒 junmai ginjo | 米、米こうじ | 60%以下 | 15%以上 | 吟醸造り、固有の香味・色沢が良好 |
| 純米大吟醸酒 junmai daiginjo | 米、米こうじ | 50%以下 | 15%以上 | 吟醸造り、固有の香味・色沢が特に良好 |
| 特別純米酒 tokubetsu junmai | 米、米こうじ | 60%以下、または特別な製造方法(要説明表示) | 15%以上 | 香味・色沢が特に良好 |
| 本醸造酒 honjozo | 米、米こうじ、醸造アルコール | 70%以下 | 15%以上 | 香味・色沢が良好 |
| 特別本醸造酒 tokubetsu honjozo | 米、米こうじ、醸造アルコール | 60%以下、または特別な製造方法(要説明表示) | 15%以上 | 香味・色沢が特に良好 |
醸造アルコールを使う場合は、その重量(アルコール分95度換算)が白米の重量の10%を超えてはなりません。特別純米酒・特別本醸造酒は、香味・色沢が特に良好であることを、精米歩合(60%以下の場合に限る)や原材料・製造方法などの客観的事項でラベルに説明する必要があります。「特別」の語は、特別純米酒と特別本醸造酒に限って使えます。
特定名称の表示では「酒」を省略して「吟醸」「純米」と書いたり、「清酒」「日本酒」と書いたりしても差し支えないとされています(「日本酒」は地理的表示を使える場合に限る)。また、特定名称以外の清酒には、特定名称に紛らわしい用語は原則として使えません。たとえば「米だけの酒」のような表現は、特定名称の清酒に該当しないことが明確にわかる説明表示がある場合にだけ認められます。
精米歩合は「白米の重量が玄米の何%か」を表す数字で、数字が小さいほど表層部を多く削った米を使っています。精米歩合60%なら玄米の表層部を40%削り取った状態です。国税庁の資料によると、一般家庭で食べるごはんの米は精米歩合92%程度で、清酒の原料米は75%以下の白米が多く用いられます。
原料米の品種名、生酒、生貯蔵酒、原酒、生一本、樽酒などは「任意記載事項」で、基準の要件に当てはまる場合に限って表示できます。条件を満たさない清酒には使えません。
| 表示 | 使える条件 |
|---|---|
| 原料米の品種名 例:山田錦100% | その品種の使用割合が50%を超える場合に表示でき、使用割合を併せて表示します。使用割合は1%単位、または5%刻み(いずれも端数は切り捨て)で表示し、5%刻みは50%を超える場合に限ります。 |
| 清酒の産地名 | その清酒の全部が当該産地で醸造(加水調整を含む)された場合に表示できます。産地が異なるものをブレンドした清酒には表示できません。 |
| 貯蔵年数 | 1年未満の端数を切り捨てた年数で表示します。貯蔵年数の異なるものを混和した場合は、最も短い年数で表示します。 |
| 原酒 genshu | 製成後に加水調整をしない清酒に表示できます。ただし、アルコール分1%未満の範囲内の加水調整は差し支えないとされています。 |
| 生酒 nama-zake | 製成後、一切加熱処理をしない清酒に表示できます。 |
| 生貯蔵酒 nama-chozo-shu | 製成後、加熱処理をしないで貯蔵し、製造場から出荷する際に加熱処理した清酒に表示できます。 |
| 生一本 ki-ippon | 単一の製造場のみで醸造した純米酒に表示できます。 |
| 樽酒 taru-zake | 木製の樽で貯蔵し、木香の付いた清酒に表示できます。販売時に木製容器に入っているかは問いません。 |
| 「極上」「優良」「高級」など | 同じ種別・銘柄の清酒が複数ある場合に、香味・色沢が特に良好で、その旨を使用原材料や製造方法などの客観的事項で説明できる清酒に表示できます。自社製品のランク付けとして使うもので、他社との比較には使えません。特定名称と併せて用いることはできません。 |
| 製造時期 | 清酒を販売する目的で容器に充填し密封した時期を、製造時期であることを示す文字の後に表示します。 |
令和5年1月1日の改正で、「生原酒」「生貯蔵原酒」のような複合表示もできるようになりました。一方、ラベルに書いてはいけない事項も決まっています。「最高」「第一」「代表」など最上級を意味する用語、品評会等で受賞したかのように誤認させる用語、官公庁が推奨しているかのように誤認させる用語は、表示禁止事項です。
日本酒度と酸度は、国税庁が定める清酒の必要記載事項にも任意記載事項の一覧にも入っていない項目です。それでも、味わいの目安としてラベルに載せている商品はあります。
酒類総合研究所は、日本酒度を日本酒の「甘辛」の目安と説明しています。数値が高ければ辛い酒、低ければ甘い酒で、「日本酒度+8」なら辛い酒、「日本酒度-5」なら甘い酒というイメージです。糖分が多くなるとマイナスに、少なくなるとプラスになります。ただし、甘い・辛いという感じ方は糖分以外の要素にも左右され、同じ日本酒度でも酸が多いほど辛く感じるとされています。数字だけで味を決めつけず、酸度や精米歩合、特定名称と合わせて見るのがコツです。
GI「日本酒」は、米と米こうじに国内産米のみを用い、日本国内で製造された清酒であることを示す表示で、国税庁長官が平成27年(2015年)12月25日に指定しました。外国産米を使った清酒や、日本以外で造られた清酒は「日本酒」と表示できません。国税庁の生産基準には、原料の米については産地情報の伝達が生産者から製造者まで義務づけられているため、国内産米の使用が確認できる、とも記されています。
もう一つは、特定の地域名を冠した地域GIです。国税庁の一覧には、清酒では石川県白山市の「白山」(平成17年12月22日指定)、兵庫県の「灘五郷」(平成30年6月28日指定)、新潟県全域の「新潟」(令和4年2月7日指定)など、多くの産地が掲載されています。地域GIの名称は、その産地以外で造られた酒や、生産基準を満たさない酒には使えません。
地域GIを容器に付けるときは、名称の1か所以上に「地理的表示」「Geographical Indication」または「GI」の文字を併せて使うことが基準で定められています(指定から2年を経過していない地理的表示などは除く)。GIを使っていない酒に、これらの文字を使うことはできません。なお、「日本酒」については、この文字の併記規定を適用しない旨が国税庁の一覧に記載されています。
国税庁の「清酒の製法品質表示基準」では、原材料名、保存又は飲用上の注意事項(製成後に一切加熱処理をしない清酒の場合)、原産国名(輸入品の場合)、外国産清酒を使用したものの表示が必要記載事項です。これに加えて、製造者の氏名又は名称、製造場の所在地、内容量、品目(清酒)、アルコール分の表示も義務づけられています。
精米歩合とは、白米のその玄米に対する重量の割合です。精米歩合60%というときは、玄米の表層部を40%削り取ったことを意味します。特定名称を表示する清酒には、原材料名の近くに精米歩合を併せて表示することが義務づけられています。
純米酒は米、米こうじ、水だけを原料とする清酒で、こうじ米の使用割合は15%以上と定められています。本醸造酒は精米歩合70%以下の白米、米こうじ、醸造アルコール、水を原料とし、醸造アルコールの重量は白米の重量の10%を超えてはなりません。
生酒は製成後に一切加熱処理をしない清酒、生貯蔵酒は製成後に加熱処理をしないで貯蔵し、出荷の際に加熱処理した清酒、原酒は製成後に水を加えてアルコール分などを調整しない清酒に表示できます。令和5年1月以降は「生原酒」「生貯蔵原酒」のような複合表示もできます。
日本酒度と酸度は、国税庁の清酒の必要記載事項・任意記載事項の一覧には含まれていません。日本酒度は甘辛の目安で、数値が高いほど辛口、低いほど甘口とされますが、同じ日本酒度でも酸が多いほど辛く感じるため、あくまで目安です。
地理的表示(GI)「日本酒」を使えるのは、米と米こうじに国内産米のみを用い、日本国内で製造された清酒だけです。原料に外国産米を使った清酒や、日本以外で造られた清酒は「日本酒」と表示できません。
令和5年1月1日施行の改正で、製造時期の表示は必要記載事項から任意記載事項に変わりました。表示する場合は、清酒を販売する目的で容器に充填し密封した時期を、製造時期であることを示す文字の後に書きます。